「教え合う」と深く学べるのはなぜ?ピアティーチングと異年齢の学びを保護者向けに解説

ひとことで言うと:人に教えようとすると、自分の理解を見直すきっかけが生まれます。年齢のちがう子と教え合う場では、教わる子も、教える子も、それぞれに学びがあります。
「うちの子、人に教えるなんてできるかな」「年上の子に囲まれて大丈夫かな」。学校以外の学びの場を調べていると、「教え合い」や「異年齢」という言葉をよく見かけます。
教える役は、勉強が得意な子だけのものではありません。好きなゲームの攻略や、レゴの組み立て方を説明するのも、立派な「教える」です。
この記事では、子ども同士で教え合う「ピアティーチング」と、年齢のちがう子と一緒に学ぶ「異年齢の学び」について、研究で分かっていることと、その限界、ご家庭でできることをご紹介します。
ピアティーチングとは「子ども同士で教える役を担う学び方」
ピアティーチングは、子ども同士がペアや少人数のグループで、教える役・教わる役を担い合う学び方です。「ピア」は英語で「仲間」という意味です。
英国の教育研究機関 EEF(Education Endowment Foundation)は、世界の研究をまとめた「Teaching and Learning Toolkit」の中で、主に次の3つの形を紹介しています(EEF の項目名は「Peer tutoring」で、ここでは「ピアティーチング」と呼びます)。
- 年上の子が年下の子に教える(異年齢の形)
- 同じ学年の子が、教える役と教わる役を決めて取り組む
- 同じ学年の子が、役を交代しながら教え合う
どの形にも共通するのは、子ども自身が「教えること」と「うまく伝わったかを確かめること」の一部を受け持つ点です。先生が一方的に説明する時間とは、子どもの役割が少しちがいます。
(出典:EEF「Teaching and Learning Toolkit:Peer tutoring」2025年5月更新)
教える側も学べるのは「説明の準備で理解を見直す」から
教え合いのよいところは、教わる側だけでなく、教える側にも学びがあることです。
人に説明しようとすると、「ここはどうしてこうなるんだっけ」と、自分があいまいにしていたところに気づくことがあります。EEF も、教える側にとっては、学んだことを見直し、自分の理解を確かめる機会になりうると説明しています。

研究でも、この点は確かめられています。28本の研究をまとめた分析(2019年)では、「あとで人に教える」つもりで準備したり、実際に教えたりすると、ただ勉強するよりも知識が身につきやすいという結果でした。さらに、一方的に話すより、相手とやりとりしながら教えるほうが効果が大きく出ていました。
教わる側にとっても、近い立場の相手からの説明は、自分の思い違いに気づいて直すきっかけになります。
研究では「平均してプラス」。ただし効果が出やすい条件がある
EEF のまとめ(145本の研究)では、学校で行われたピアティーチングの取り組みは、平均すると「1年間で約6か月分の学びの上積みに相当する」程度のプラスの効果がありました。教える側・教わる側の両方に効果が見られました。
ただし、この数字はあくまで研究の平均です。主に学校で、準備された取り組みとして行われた研究をまとめたもので、どの子にも同じ効果があるという意味ではありません。EEF 自身も、研究の多くが独立した立場で評価されたものではない点を、注意点として挙げています。
そのうえで、効果が出やすい条件として、次のような点が示されています。

- 新しいことを教えるより、復習や定着に使う
- 教える側を大人が支える:教え方の準備や、質問の型を用意するなど、やりとりの質を保つ工夫
- 年の差はほどよく:教わる側には少し難しく、教える側には支えられる程度の差。年上が教える形では、一部の研究で、年の差は3年未満がよいとされています
つまり、子どもたちを並べて「教え合ってね」と任せるだけでは十分ではありません。大人がそっと支えることで、教え合いが学びにつながりやすくなります。
異年齢の学びで育つのは「人の役に立てた」という実感
年齢のちがう子と過ごすことの良さは、勉強の理解だけではありません。
国立教育政策研究所は、「人の役に立った」「人から感謝された」「人から認められた」という感覚を「自己有用感」と呼んでいます。これは、自分ひとりの自己評価ではなく、だれかとの関係の中で生まれる自信のことです。同研究所の資料では、「褒めて育てる」よりも「認められて育つ」ほうが、自信が長く続きやすいとしています。
そして、この自己有用感を育む方法として、文部科学省の委嘱研究が提言したのが「異年齢の交流活動」でした。その考え方は、学習指導要領にも「異年齢集団による交流」として取り入れられています。
年下の子に「すごいね」「ありがとう」と言われる経験や、年上の子にあこがれて「自分もやってみたい」と思う経験は、学年ごとのクラスだけでは得にくいものかもしれません。
(出典:国立教育政策研究所「生徒指導リーフ Leaf.18『自尊感情』?それとも、『自己有用感』?」)
学校の授業とも、教え合いとも、組み合わせて考える
教え合いは、先生の授業に代わるものではありません。先生から学ぶ時間と、子ども同士で学ぶ時間は、それぞれに役割があります。
学校でも、教え合いは大切にされています。中央教育審議会の答申(2021年)は、子ども同士で協働しながら学ぶ「協働的な学び」は、同じ学年・学級だけでなく、異学年間の学びや、他の学校の子どもとの学び合いも含むとしています。異学年の交流を通して、子どもが自分の成長を振り返り、自己肯定感を育む取り組みも大切だとしています。
同じ答申は、集団の中で一人ひとりが埋もれてしまわないようにすることも大切だとしています。教え合いは「全員が同じように話す」ことではなく、その子なりの関わり方で参加できることが大切です。
(出典:中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」令和3年1月26日)
ロボテック学園の「教え合い」
私たちロボテック学園の全日制フリースクールでは、生徒自らが先生になって、調べたことをほかの生徒に教え合う「ピアティーチング」を取り入れています。自分の興味のあることを人に伝えることで、より深く学べるようにするためです。
放課後フリースクール®でも、すぐ近くに仲間がいるので、自然と教え合ったり一緒に学んだりすることができます。先生は、協力したい・教え合いたいという気持ちが生まれるように子ども同士をそっとつなぎ、最後の「共有タイム」では、その日できたことや発見したことを話します。
ロボテック学園の全日制フリースクールには、「やらなきゃいけないこと」はありません。人と話すのが苦手なお子さまは、まず自分の好きなことに取り組むところからで大丈夫です。
ご家庭でできること|子どもに「先生役」をお願いしてみる
教え合いの良さは、ご家庭でも少しずつ取り入れられます。いちばん手軽なのは、親が「教わる側」になることです。

- 「それ、どうやるの?教えて」と頼んでみる:ゲーム、工作、好きな動画のことなど、子どもが詳しい分野で構いません
- 説明を最後まで聞く:途中で正解を言いたくなっても、まずは聞き役に徹します。うまく説明できなくても、言い直すうちに考えが整理されることがあります
- 「ありがとう、分かった」と伝える:教えてくれたことへのお礼は、「人の役に立てた」という実感につながりやすくなります
兄弟姉妹やいとこなど、年の近い子どもがいれば、年上の子に「教えてあげてくれる?」とお願いしてみるのもよい方法です。ただし、教える役が負担にならないよう、短い時間から試してみてください。
まとめ
- ピアティーチングは、子ども同士で教える役・教わる役を担い合う学び方
- 研究では、教える側・教わる側の両方に平均してプラスの効果。ただし数字は平均で、復習に使う・大人が支える・年の差をほどよくする、といった条件がある
- 異年齢の交流は、「人の役に立てた」という実感(自己有用感)を育む方法として、国の研究でも提言されている
- ご家庭では、親が「教わる側」になって、子どもの説明を最後まで聞くことから始められる
学校以外の学びの場をまだ調べ始めたばかりの方は、フリースクールとは?学校との違い・費用・出席扱いを保護者向けにやさしく解説もあわせてご覧ください。
ロボテック学園は、宇都宮市でプログラミング教室を運営してきた私たちがつくったフリースクールです。
コースは2つあります。平日の日中(10:00〜15:00)に通う全日制フリースクールと、学校帰り(16:00〜19:00。教室ごとに水曜または木曜)に通える放課後フリースクール®です。どちらも、やりたいことは子ども自身が決められます。放課後フリースクール®では、小学生から中学生までが同じ空間で過ごします。
ロボテック学園では、全日制フリースクールと放課後フリースクール®の無料体験を受け付けています。お子さまが「ここなら自分らしくいられる」と感じられるかどうかを、まずは見に来てください。
考える力を育てる教室|栃木・群馬